「新しい挑戦として、今回の作品にはオルゴナイトを使っています。オルゴナイトは金属片とクリスタルを樹脂で固めた装置のことで、ネガティブな電磁波エネルギーを無害化し、ポジティブなエネルギーに変換すると言われているんです。これをぜひ取り入れてみたくて。これを家に置いたらどんな風になるのだろうかという実験的な意味もありました。絵を見て欲しいというのはもちろんありますが、私にとって個展は実験や哲学を発表する場所でもあるんです」

これまでも黄金律に沿った図象、植物の対数螺旋的成長、などを作品に取りこんできた。草花というモチーフを積極的に用いているのは、ブッダが弟子たちの前で一輪の花を差し出したという伝説「拈華微笑(ねんげみしょう)」から来ているのだと、D[diː]自身、「悟り」後に気付いたという。また、今回の個展ではフィボナッチ数列を取りこんだ作品も発表している。

今回の個展について話す際、D[diː]は何度か、「実験的」「楽しみ」という言葉を使った。

彼女が伝えたいこと、そして作りあげる「力」を多次元的に閉じ込めるための手法がこれまでも用いてきた、シルクスクリーンで刷った上に蜜ろうやガラス粉を塗った「ハーモニック・ペイント」だとしたら、よりその気を浄化させ、半永久的に存在させる手法が、今回初めて挑戦する「オルゴナイト」という装置を組み込んだ、新技法「ハーモニック・オルゴナイト・ペイント」なのだろう。

「ステイトメントにはじっくりと時間をかけます。そこにいちばん時間をかけるといってもいいくらい。でも作品を通して伝えたいことって、いくら真面目に話しても興味がある人にしか聞いてもらえないじゃないですか。説教くさくなっちゃいますしね(笑)。だから絵を通して、もっとカジュアルに伝えたいと思っている。」

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<The DOOR 自分回帰>は、D[diː]にとって新たな挑戦だ。

「私がD[diː]という覚えづらく、検索もしにくい名を称しているのは、性別、国籍などを超越した記号になりたかったから。名前の由来を聞かれても、かたくなに言わずにいたのですがお伝えすることにしました。もともとはあだ名の一文字から取ったのですが、私というドア(DOOR)から新しいものを取り出したいという意味もあります。同時に年齢も公開することにしました。」

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転校が多い子ども時代、なかなか友達ができず、家にこもって絵を描くのが好きだった。「最初に褒められたのが、たしか絵だったのだと思います」。理数科に進んだ高校時代には、教師から赤点突破のひきかえに、絵を所望されるほどになる。「とにかく絵を描くことは好きだった」少女は、運命に導かれるままに表現者の道にすすんだ。来年にはアーティスト活動20周年を翌年に控え、近い将来、海外で作品を発表したいという目標もぶれることはない。

「私の場合、すぐに次に興味が移っていってしまうので周りの人がついて来られないこともありますが、ひとつ調べ始めるととことんつきつめなる性分で。そろそろ、海外に住んだほうがいいんだろうなとは思っています。そこで、その国の価値観や宗教感を学んで、作品を発表してみたいという思いは常に持っています」

大きな節目を前に今D[diː]が伝えたいものとは──? ぜひ会場に足を運び、ほかの誰の作品とも似ていない、今のD[diː]だからこそ表現できる世界観、彼女のDOORから放たれた「力」を味わってみたい。

D[di:] exhibition「The DOOR 自分回帰」

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EVENT INFORMATION

The DOOR 自分回帰/THE LETTER from the future, past, somewhere

2016.11.11(金)〜12.04(日)※定休日:水曜日・木曜日
OPEN 13:00/CLOSE 20:00
TAV GALLERY(東京都杉並区阿佐谷北1-31-2)

※ご好評につき展示期間が延長となりました。

詳細はこちら

Text by Aya Hasegawa
Photo by Nozomu Toyoshima