Photo by Mari Inoue

回に渡ってお届けしてきた“ベルリンカルチャーの魅力を紐解く旅”ですが、いよいよ今回で最終回を迎えます。最終回の今回は前回に引き続き、ベルリンのファッションについて。高級なブランドショップより、手頃で上品な北欧ブランドやクオリティーが高く手頃なプライスで手に入れることが出来るセカンドハンドやヴィンテージショップが目立つベルリンのヴィンテージファッション事情に迫ります。

また、今回の特集のフォトグラファーでもあるMari Inoueさんにベルリンで活動しているクリエイターとしての仕事、ライフスタイルなどいろいろお話を聞かせてもらいました。ラストのスペシャル企画として、PANE&vintage展示会に来ていたガールズファッションスナップも是非ご覧下さい! 


Photo by Mari Inoue

滞在中に運良く開催されていたヴィンテージレーベルPANE&vintageの展示会&パーティーへ参加することが出来た。PANE&vintage(パネ・アンド・ヴィンテージ)はベルリンを拠点に展開しているヴィンテージファッションのレーベルで、イタリア人オーナー兼バイヤーであるGiulia Iovine(以下、ジュリア氏)氏がヨーロッパ各地で買い付けてきたヴィンテージやセカンドハンドをフリーマーケットやファッションウィークのトレードショーに出展しているインディペンデントレーベル。
ファッションやクチュールデザインを学んできた彼女ならではの知識とセンスが光るセレクトが人気で、会場内はスタイリストやファッション関係者、友人たちが多く集まっていた。

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Photo by Mari Inoue

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特にヨーロッパヴィンテージ特有のラグジュアリーで女性らしいデザインが多く、ドレスやシューズ、バッグ、アクセサリーなど豊富なラインナップに、アメリカよりヨーロッパテイストが好きな私にとっては夢の様な空間でした。ラグジュアリーな中にはカラフルでPOPなアイテムも混ざり、ユニセックスで着れるニットやモダンセンチュリーな小物など誰が見ても楽しめるラインナップばかり。プライスも日本の価格より手頃なものばかり。PRADAのアンティークバッグが300ユーロ(約30,000円)、ハイエンドブランドのセカンドハンドでも3000円ぐらいから手に入れることが可能とあって、ヴィンテージファッションが主流になるのも理解出来る。

「生まれ育ったイタリアと日本のファッション感覚はとても似ている。日本のオシャレに関心の強いいわゆる“ファッショニスタ”と呼ばれる人たちのセンスにはとても注目している。ただ、そういった一部の人を抜かすとみんな似たファッションが多く、あまり個性を感じられない。ベルリンはいかに安く、良い物を手に入れられるかという考えの人が多いし、堅実的。ファッションビジネスをする街として、難しいと感じることもある。」とジュリア氏は言う。

オシャレをすることを嫌う人はあまりいないと思うが、再開発が進んでる街であっても、人々の志向はそれほど急激に変化はしないのかもしれない。次から次へと新しい文化が生まれ、新しいビジネスになっていく日本と古くて歴史あるものを後世に残し続けるドイツとではマーケット事情も違うのだと。

Photo by Mari Inoue

事情が違うといえば、その暮らしぶりである。ドイツではWG(ヴェーゲー=ヴォーヌング・ゲマインドシャフト=Wohnggemainschaft)といって、アパートメントを数人でシェアするスタイルが主流となっている。

今回の展示会会場となっていたジュリア氏とマリ氏のアパートメントは100年以上経つ歴史的建物で、とても風情がある。現在4LDKを出身国の違う男女4人でシェアしている。広いリビングと奥の部屋がショールームとなっていて、パーティーも兼ねていたその日はウォーキングクローゼットがDJブースに。広いキッチンにバス&トイレが2つずつ。この日も30人以上は来ていたが、この広さで家賃は東京の1/4ほどというからため息が出るばかり。場所や条件にもよるが、WGであればベルリンの中心地でも1人2~3万の家賃で東京では考えられないほど広いところに住める。

フォトグラファーとしてベルリンに住み出して3年のマリ氏にWGでの暮らしや仕事、環境についてなどいろいろ話を聞かせてもらった。

「ベルリンで数回引っ越しを繰り返しまし、ほぼWGで他の国の人々と暮らしていました。最初はポーランド人とスペイン人と住み、次にアメリカ人、そして今のアパートにはドイツ人、イタリア人、アメリカ人、そして日本人の私を入れた同じメンバーで1年ほど住んでいます。外人と一緒に住むということ関しての不安というのは私の場合最初のみで、それに対して私は抵抗がなく、共同生活全般で言えば互いの文化を尊重したり理解する機会が与えられるので恵みも大きいです。元を正せば私たちは皆同じ人間であるし、国籍によって価値観やその人の人格をカテゴライズしないようにしています。

確かに国が違えば価値観も違うのは当たり前であるし、生活においてたまに問題が生じることもあります。でもどのような問題が起こっても先ずは意見を交わす場を設けることで大体の問題は解決されていくものです。相手の意見にきちんと耳を傾け、自分の意見を伝えるといこと、つまり会話というより対話(ダイアローグ)をするということ、これはWG生活のみでなく、特に海外生活全般で日本での生活と大きく違う点だと思います。でもこの行為は本来、海外に捉われたことではなく、人間関係の中で最も大事だとも思うのも事実です。。

また、ベルリンは物価が安いので移民(特にトルコ系)も多かったり、それでもここ5年ほどでだいぶ物価は上昇して問題視されるといった地元住民の声もありますが、隣国に仕事で行ったりするとその物価の違いにびっくりしたり、特に日本との物価の差は大きくていつもビックリしてしまいます。ドイツ人は基本的に「もの」を大事に使うという風習が伝統的でもあるので、日本のように流行のものを買うという消費文化はベルリンは特にあまり優遇されないような気がします。ものだけでなく、価値観や考え方など生活自体がシンプルなので、何が必要かという本質が見えやすいというのも恵みです。ベルリンの雰囲気やこういった考えはアートをやる上でも常々精通する部分がある気がして、、、特にたまに撮影などで他の国からベルリンに帰国する度に街の雰囲気と共に落ち着いて、改めて自分は何をしたいかというように自分の直感(心の声)に耳を傾けようとして、新たにエネルギーを補給出来る場所でもあります。」

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Photo by Mari Inoue

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私自身、移住したいと考えてる1人であるが、不安なのはやはり収入源である仕事のこと。その辺はどうなのだろうか?

「私のやっている部門(アート)ベルリンは他の大都市と違って仮にキャリアがゼロであってもスタート可能な場所であると思います。先ずは実力主義というか、自分のやりたいことに対して修行したり、それを極めるという心構えがきちんとあるかという点を試される場所だと思います。そのような心構えのある方であれば、ベルリンは最適な街であると思うし、本気で何かを作りたいという情熱のある人であればキャリア関係なく、堂々と公平に挑戦出来る場所が用意されている可能性は十分に秘められた場所であると思います。

また、仕事面では(経験上)お互い競争するというよりも、一つの目標に向かって一緒に努力したり、喜びを共有する空間があったり、生活面では助け合いの場が多く見られるのも特にベルリンらしいと感じます。」

【フリーランスPR&ライター宮沢香奈が迫る!!】ベルリンカルチャーの魅力を紐解く旅 vol.5 - 最終回 - life130513_berlin_wg1

Photo by Naoko Hirose

“日本より遥かに物価が安く、アーティストやクリエイターが住みやすい街”それがベルリンだと憧れを抱くばかりでしたが、どの街においてもメリット、デメリットは当然あるのです。それでも導かれるようにして行きたい場所があるのなら行ってみることが自分の道なのではないでしょうか。また新しい街を発掘することと再独を心に誓って、この特集を終えたいと思います。出会えた人々すべてに心から感謝の気持ちを込めて。

Danke schön

プロフィール

Photo by Oliver Blohm
Cloth Omas Hände
井上マリ(Mari Inoue)  
大分県生まれ。上智大学卒業。ベルリン在住。
地球上に生きるヒトや自然を見つめることが好きで、旅を続けては作品作りを行う。ファッションや音楽など自身のこだわりの要素を生かし、ポートレートを中心に被写体に収める。
またVOGUE JAPANでのストリートスナップをはじめ、様々なファッション、カルチャー誌の撮影を担当。特にストリートスナップではドイツを初めパリ、ミラノ、バルセロナ、ヘルシンキ、東京など世界各国を飛び回り実績を重ねる。vogue.comのブロガーとして「イノウエマリのベルリンライフ通信」を発信中。

展示:
2012年3月 Solfa Nakameguro(東京)
2012年4月 Emeralda Club(岐阜)
 「スイス・ベルン ポートレート」発表
2013年1月 合同展覧会「KATATI」 Block House(東京)
 コレクション「Echte Liebe」(純愛)発表

Photo by Mari Inoue ジュリア・ヨビネ(Giulia Iovine / PANE&vintage)
イタリア・フローレンスにてファッション文化、デザインを学び、質の高いヴィンテージ洋服を集め始めたことがきっかけとなり、独自のヴィンテージレーベル「PANE&vintage(パネ・アンド・ヴィンテージ)」を開始。「PANE」はイタリアンブレッドの意で、イタリアに食文化を取り入れて、同時にヴィンテージファッションを楽しんでもらいたいというのがネーミングに込めた自身の想いでもある。
2010年地元フローレンスのクラブ・バーにてイタリアン・アペリティーボ(前菜)を振舞い、ヴィンテージファッションの洋服の販売を行うイベント活動を開始したのがきっかけで、現在ではベルリン各地のフリーマーケットで独自のレーベルの洋服販売などを行っている。
近年ではベルリンファッションウィークBread&Butter(ブレッド&バター)のヴィンテージ部門Toast&Jam(トースト&ジャム)を初め、ベルリンで人気のファッションイベントvoodoo market(ヴォドーマーケット)へ出展を果たし、昨年10月にはベルリンの自宅にてPANE&vintageのショールームを行い、同時にDJパフォーマンス、イタリアンアペリティーボを振舞うイベントを行う。

Snap:PANE&vintag

[twocol_one]1. Roxana (ロキサナさん)
学生 24歳

グリーンのトップスに合わせて、ブーツも同色をチョイス。スカーフ、小物など全てヴィンテージでコーディネート。[/twocol_one]
[twocol_one_last]2. Karin (カリンさん)
デザイナー

全身swap(スワップ)でゲットしたもの。特にアフリカン柄のロングシャツはシルク素材で色々な着こなしが出来るので気に入っているそう。
※swapとは・・・不要になった洋服を持ち込み合い、イベントの中でお互いの洋服を無料で交換し合うベルリンで開催されているパーティ感覚のファッションリサイクルイベント[/twocol_one_last]

[twocol_one]3. claudia(クラウディアさん)
ダンサー

ママのおさがりであるファーのジャケットを着用しゴージャスに演出し、足下はNIKEのスニーカーでカジュアル感を出して。[/twocol_one]
[twocol_one_last]5. Marika(マリカさん)
ダンサー

ブリュッセルで購入したというお気に入りのグリーンのブーツをポイントにZARAのロングニットを合わせてラフな着こなしの中にもまとまりを持たせて。[/twocol_one_last]

[twocol_one]6. Milena(ミレナさん)
大学生 

コートはPANE&vintageのレーベルから出店しているヴィンテージ。重たくならないようにスカーフ、バッグなどの小物類は明るめをチョイス。[/twocol_one]
[twocol_one_last]7. Giulia(ジュリアさん)
ヴィンテージレーベルオーナーPANE&vintage

ローマで購入したというヴィンテージジャケットにドットのスウィムウェアをインして胸元をセクシーに。パンツはH&Mにて購入。[/twocol_one_last]